海外で歯医者には掛かりたくないが・・・
スリランカのみならず、海外で歯医者には掛かりたくない、とは誰しも思うことである。
それは、まずその国の医療技術レベル、治療方法はどうか、設備・技術はどうかなどが不安になるからである。
そして、治療金額だ。特に歯科治療は海外旅行保険の対象外になっている場合が多い。
そんなこともあり、私自身、スリランカへ来る前に、近くの歯医者に行って「海外に長期間滞在するので、悪いところは全て治したい」とお願いした。
それでも、二度も 歯医者へ行く羽目に
ところが、赴任直後の6日目の10月1日、ライス&カレーを食べていた時、口の中で何か硬いものを感じたと思ったら、詰め物(インレーと言うらしい)が外れたみたい。
明くる日、ローカルコーディネーターに相談して、歯医者に連れて行ってもらったが、すんなりとインレーを元の位置に取り付けてくれた。
料金はRs.1,000(約900円)。この歯医者は個人の家でやっている感じで看板も何もない。口コミでしか来ないようなところ。これまでも何人かのボランティアがここで治療を受けたと聞いている。
治療台(椅子)も色褪せた古い感じだし、口ゆすぎのコップもステンレスのコップに水を継いで入れる非自動設備。まあ、接着だけだからいいか、って感じだった。
それから、3か月後の1月の11日、また同じ場所のインレーが外れた。
また、同じ歯医者に連れて行ってもらい、同じように接着してもらったが、先生は「前も言ったように、歯が割れかけている。これでは長く持たないでしょう」と言われた。
今回はなぜか、Rs.2,000だった。
その後、食事の時は出来るだけ、左のしっかりした歯を使うよう心掛けていたが、ある日、その歯の隙間に食べ物が入る込む感触を得た。
実際、割れていそうな部分は指で触れると動いている。インレーはしっかりした方の歯に引っ付いているようだが、その隙間に何かが挟まると、痛いと言うより、歯が割れるかもと言う感触がある。
そして、それから3月29日、夕ご飯を食べている時、ついにその時がやって来た。もう時間の問題と思っていたので、覚悟はできていた。
しかし、これは日本で治療しないと行けないとずーっと考えていたので、早速飛行機の便を調べた。
治療にどれくらい日数がかかるだろう。往復チケットより片道ずつがいいかな。往復で10万円はかかるけど、仕方ないな・・・。
日本に帰るか、コロンボで治療をするか:
明くる日学校に行って、いろんな人に相談、と言うよりむしろ、「歯の治療に日本へ帰る」と顔を見ると挨拶代わりに言っていた。
みんな、ビックリした様子で、「えー、どうして?」とか、「いくらかかるの?」とか。
スリランカ人は歯のことを重要に思っている人は少なく、歯が悪くなれば抜くのが一般的な考えのようだ。そして、その後の処置もしないで、歯のない人は30%もいるとのデータがある。
これに対し、「日本人は歯を大切なものとして考えており、滅多に抜いたりはしない」と説明をするが、考え方の相違なのか、なかなか腑に落ちないらしい。
学校のコーディネータにも「歯のインレーが取れたので、日本に帰って治療する」と言ったが、彼は、「スリランカでも良い歯医者がいるので、まず診てもらってはどうか。それから決めれば良い」と。
そして、校長に電話をしてある歯医者を教えてもらった。そこは、CeyMed Hospitalと言う病院の歯科だった。
早速、予約の電話を入れたが、スリランカでは予約は出来ないらしく、まず病院に行ってお金を支払ってから予約が出来るシステムである。
定時後、病院に行き、診察料を払い診察室に行った。
幸い誰も待ってなくて、直ぐに見てくれた。
先生は「この歯は割れているので、割れた部分を除去して、上から詰め物をして、クラウンをかぶせる」と診断。
その後、X線写真を撮って再度診てもらった。
先生は、「どうする?今から始める?」って聞いて来たので、「いや、今日は診察だけで、相談してからまた来る」と言って、そこを出た。
治療方法を日本の歯医者に相談すると
早速、アパートメントに帰ってから、日本で掛かっていた歯医者さんに手紙を書き、コロンボで受診したの歯医者の診断結果とX線写真を添付してメールを送り、アドバイスを求めた。
明くる日、「歯医者のレベルは分からないが、この治療方法は日本と同じ。コロンボで治療をしてもらい、次に日本に戻られた時、診てみて、問題があれば治してはどうか」と返事があった。
「うーん、日本と同じ治療をするんだ、ここコロンボでも・・・」と治療方法については、少し安心感を持った。
で、これを受け入れて、早くスッキリしたいと思うようになり、明くる日学校でコーディネーターに「今日、出来たら歯医者に行って、処置を受けたい」と行った。
ところが、コーディネーター、「昨日キャンセルした約束があり、今日に延ばした。なんども延ばすと嫌な奴と思われるので、よければ明日に出来ないか」との返事。
もう、安心感もあったので、「それじゃ、明日一緒に行ってくれる?」とお願いした。
彼(コーディネーター)は本当に良い人で、昨年、まだ若い奥さんを亡くされて、子供の世話から料理・洗濯など母親代わりもしながら、私の面倒も良く見てくれる。
出来るだけ世話にならないように心掛けているが、病院などは一人で中々行けないので、どうしても現地の人の助けがいる。
でも、どこの歯医者がいいだろうか
その日は帰って、いろいろと考えていた。同じ行くなら、最新の外国人もよく利用する医療機関が良い。
そうだ日本大使館や日本人会なら、評判の良い歯医者を知っているかも知れないと思った。
それで、あくる日、日本大使館に電話を入れてみた。
しかしながら、受付嬢は「医務次官は今日お休みです」と勿論日本語で応える。
「他に誰か分かる人は居ないの?」って、聞いて見たら、「英語でしたら、秘書がいますが、よろしいでしょうか」と。「そうですか、それじゃ繋いで下さい」って感じで、とにかく早いこと決めないと、と思って繋いでもらった。
セクレタリー: “This is doctor secretary. May I help you?”
私: ”I have some problem on my tooth. Do you know some good dentists?”
セクレタリー: ”Yes, there are some dental hospitals in Colombo. One is Sakura Dental Hospital. But it’s expensive, and only open on Sunday. So I would like to introduce Central Hospital instead. They have new equipment in a new facility. Let me check the telephone number and I’ll call you back soon.”
・・・と。そして、数分後電話がかかって来て、セントラルホスピタルの番号を聞いた。
早速、コーディネーターのところに行き、「今日、この前の歯医者に行くのはキャンセルして、代わりにこの歯医者に行きたい。ここは日本大使館から聞いた病院で、設備も新しいらしい」と。
それで、電話予約をお願いした。丁度、別のローカルコーディネーター(派遣元のコーディネーター)がコロンボに来ていたので、彼に電話をして同行をお願いした。
コロンボにあるセントラルホスピタルに
4時頃、紹介されたセントラルホスピタルに到着。
大きな総合病院で4年前に建設されたばかりで、まだ新しく、広くてきれいだ。
日本の病院と何ら遜色はない。「ここなら、新しい設備で安心だ」と第一印象。
内部も新しく、歯科受付のスタッフも感じが良い
歯科のある4階に上がり、受付で初診料Rs.700を支払た。
ここでも、歯科には誰も待っていなかったので直ぐに診てもらった。
ついに、コロンボで歯の本格治療をしてもらう
診療室に入ると、広くて清潔な感じ。また治療器具も新しく違和感はない。
先生に私の方から、経緯やX線写真を見せながら一昨日の診断結果を説明していたら、「まず見せて下さい」と叱られ、その後、「うん、これは、割れた部分を取り去り、その後、周りを少し削って、クラウンをかぶせる」と処置方法の説明を受けた。
今までと同じ診断方法だった。それで、覚悟を決め「じゃ、おねがいしよう」と思った。
そして、先生は治療を始めた。
注射はせず、スプレーだった。やがて麻酔が効いて来たとき、先生がやっとこを袋から取り出した。
割れた部分を引抜こうと言う考えらしい。”Will you pull out my tooth?” と思わず、しびれた口から発した声に先生は、”No, not pull out your tooth. only the broken part” と、切り返した。
あそうそう、歯を抜くんじゃないんだ。でもやっとこでするとは、昔から変わらないね。(多分日本でもこれを使っているんだ)で、割れた部分の歯が除去出来た。出血はわずか。
痛みは全くなく先生は “Good Boy! Good Boy!” とおどけて言った。
私は歯医者を怖がる子供のように騒いでいたんだろうな。
先生は、「日本人の歯は世界で一番良い。次は韓国。米国は最悪」と言って、日本人が歯を大切にすることを良く知っていた。
それで、その日は、歯の型を取り終わり、次回土曜日に来るように言われた。「案ずるより・・・」だが、やはりスリランカなので、案じてしまうのは仕方ない。
ともかく、今日の選択は正しかったと思う。
2日目の土曜日、病院に行ってみると、一人が治療中(スリランカ人)で、終わると直ぐに診察室へ入るように案内された。
そして、先日取った歯の型で、かぶせもの(クラウン)が出来ていたので、それを一度かぶせてから、本格的に消毒剤、接着剤などを塗り、接着した。
「これで、歯のレベル合わせを次の水曜日にするので、来て下さい」と。
料金は前回の支払いに全て含まれているようで、支払いはなかった。(先払いシステム)
「えー、安いんじゃない。セラミックだし。日本だったら保険がきかないので、多分10万円近くかかるだろうな。
人件費が安い分、やっぱり1/4程度の料金になる」と逆に割安感に納得。
日本の健康保険は、海外で治療に掛かった時、申請すると日本で受けた治療に換算してその金額が返って来る仕組みになっている。
しかしながら、私の場合、市役所の健康保険課に相談しに行ったが、半年以上の海外滞在では日本国内居住者として認められないので、申請を諦めることにした。
スリランカの国立病院はどうか
コロンボで歯医者を探している時、ローカルコーディネーターに別の歯医者の紹介もあったので行ってみることにした。(既に治療は行っていた後であるが)
ここはDental Hospitalと言う国立病院で、医療費は外国人も全額タダ。
スリランカでは国立病院に行くと医療費は無料であると聞いていたが、実際そうであった。
しかしながが、多くの人が朝早くから列を作り、長時間待たされる。
大きな国立病院 Dental Hospital
この病院は、大変古い建物で、どこか怪談話に出て来る雰囲気をもった病院だ。
隣に新しい病院を建てていて、関係者は「この4月25日に移転する」と言っていたが、そのビルディング、まだ内装どころか、外装も出来ていない。
あと、2週間少しでぇ?
それは、絶対無理。でも政府だから、公にそう言っているんだろう。
約束出来ないことを平気で言ってしまうのが、スリランカン スタイル だ。
訪れた日は、土曜日の午後で休診だったので、医者とは話しできなかったが、看護婦と話をした。
やる気のなさそうな若い看護婦とヌシのようなベテラン看護婦がいた。
「治療室を見せてくれ」と言って頼んだら、中に入れてくれた。「この設備は何年くらいになるの?」って聞くと、「5年ほど」。
「どこの製品?」「フロム チャイナ」
5年ほど前にチャイナの中古を入れたようだ。
国立は予算が少ないため、新品はほとんどなく、日本や中国で使われた古い器具とかが使われている。
それで、「ここではクラウンなどの処置はするの?」に対し、「出来ない」と答えた。
つまり、私が私立病院で受けている治療は、ここでは受けれないと言うことだ。
私立病院で3万ルピーもする治療を国立で無料ですることは予算的に出来ないのだろう(歯の治療は日本でも保険適用対象が限定されるくらい、治療によっては高価になる)
スリランカで、歯の治療に関して、2つの市立病院と一つの国立病院に行って、治療方法、医療レベルを確認したが、国立病院では、高度で金のかかる治療は受けられず、簡単な治療方法を取るのが一般的だと考えられる。
それは、政府も国民も歯の健康に対する意識が低いためと考えられる。
しかしながら、国立病院の先生も、ある時間国の病院で義務として働いた後、私立病院にて働くのが普通で、国の安月給を、民間の病院で補っているらしい。
したがって、先生の技術レベルは同じとも考えられる。
スリランカで歯が痛くなったらどうするか
旅行中に歯が痛くなることもある。旅行保険も効かないし、全て自己負担。それより歯医者が不安。特に後進国ではなおさら。
我慢するか、歯医者で応急処置をしてもらうか。旅行の時間を割いてまで歯医者に行く?といろいろ悩むところ。
スリランカで歯が痛くなったときに下記のリンクが参考になる。